
旅の終わりに出会う静けさ
旅には、始まりの高揚があり、途中に迷いがあり、
そして、終わりには静かな“確かさ”がある。
カメラを持って世界を歩いていると、
不思議と、最後の瞬間にこそ「本当の風景」に出会うことがある。
それは、目的地ではなく、
荷物をまとめ、帰路につくその“手前”にある風景だ。
たとえば、ハワイ島での滞在の終わり。
朝焼けでもなく、日没でもない、
ただ淡く光が変わっていく時間に、何度も心を奪われた。
もう撮らなくてもいい。
もう、探さなくてもいい。
そう思ったときに限って、ふと目の前に“その景色”が現れる。
きっとそれは、
「何かを得よう」としている自分ではなく、
「ただそこにいる」だけの自分だから見えるものなのかもしれない。
旅の終わりには、
どこか“ありがとう”という気持ちが風にまじっていて、
それが光や海や木々と重なるとき、
写真を超えた感情が、そこに静かに立ち上がる。
今、飾っている一枚の写真も、
そんな「帰り道の風景」だった。
それは観光名所でも、絵になる場所でもなかったけれど、
“もうすぐこの時間が終わる”という切なさと、
“また始められる”という希望が、
同じ空の中に混ざっていた。
だから僕は、
旅の終わりにシャッターを切ることを、
少しだけ大切にしている。
Atsushi Sugimoto